第2章
山幸彦・海幸彦神話から学ぶ禁断と社会秩序
隠された真実、神話の序章
更新2024/9/30
目次▼
『海幸彦、山幸彦、神話』
二人の兄弟神、海幸彦と山幸彦の釣り針をめぐる争いから始まるドラマ
古代日本人の世界観や価値観そして社会構造、文化、などを学ぶことができます。
そして日本人の心に深く根ざし、日本文化に重要な役割を果たし、
人間関係や自己成長のヒントが学べる物語です。
山幸彦(ホオリノミコト)は、兄・海幸彦(ホデリノミコト)の釣り針を海に落としてしまい, 海底のワタツミノミヤへと探しに出る弟・山幸彦は、ワタツミノミヤでトヨタマヒメと出会い、約3年を過ごします。 鯛ののどに引っかかっていた釣り針を手に、地上に戻ることになった山幸に、豊玉姫の父である海神は、 山幸彦に、魔法のような塩満珠(しおみつたま)と塩涸珠(しおふるたま)を渡します。 潮の満ち干きと言う大きな力を手中に治めた山幸彦に、兄は仕えるようになりました。
2.章
山幸彦・海幸彦神話から学ぶ禁断と社会秩序
隠された真実、神話の序章
<豊玉姫の出産神話>
トヨタマヒメは、既に身重みおもであり、風波の荒い日に地上の海辺に行って出産すると言います。 その為、山幸彦に「波打ちぎわに鳥の鵜の羽で小さな産屋(うぶや)を建ててく ださい」とお願いしました。 大亀に乗った豊玉姫命とよたまひめのみことが、妹の玉依姫たまよりひめを連れ、海を光らして鵜戸うどの地に参ります。 そして、屋根を葺ふき終わらないうちに御子みこを御出産になりました。 出産を迎えたトヨタマヒメは「子どもを産む姿は絶対見ないでください」とお願いします。 しかし、山幸彦はつい産屋の中を覗いてしまいます。 すると八尋和邇(ヤヒロワニ)が出産の苦しみで、のたうちまわっていた。 豊玉姫本来のお姿を山幸彦は見てしまいました。
古代中国では、
鵜は大きな口を開けて、食べた魚を吐き出すことから、
「安産」の霊力があると考えられている。
鵜の羽で「産屋」を葺いたのはそのためかと。
実際に、鵜の羽に霊力ありとの信仰(風習)が南島には存在しているらしい。
@奄美大島:妊婦の家は屋根を葺かない。
@沖縄:鵜の羽には安産の力がある。
和漢絵本先駆 葛飾北斎より 「豊玉姫の出産」
「八尋」は、人間の両腕を広げた長さを表す単位で、 およそ1.5メートルから1.8メートルと言われています。 巨大生物?だった。あるいは想像上の巨大な信仰物を 指していると考えられます。 八尋鰐は、龍の原型とも言われています。龍は、水と雨を司る 神聖な存在として、多くの文化で崇拝されてきました。 八尋鰐は、単なる生物ではなく、自然の力や生命の神秘を 象徴する存在として、人々に畏敬の念を抱かせてきたようです。
八尋和邇はサメやワニと言う論争がいろいろありますが正体はなんなのかは定かになっていません。 古代中国や奄美近海にはワニが生息していたしていた記述もあります。 陸でのたうちまわれるのはワニ? 古代の人々は、自然現象を神々の働きと捉え、畏敬の念を抱いていました。 特に、水は生命の源であり、雨、水を司る神として龍が崇められるようになったと考えられています。 玉依姫も想像上の生物『龍』の姿で描かれてたのでしょう。
<禁断と社会秩序>
見てはいけないものを見ると別離があるのが日本神話の特徴でもあります。
神聖な領域への侵入はタブーとされ人間の傲慢さに対する戒めとしてされてます。
その悲劇の裏には、人間の成長や運命、そして社会の秩序といった、より深い意味が隠されているのです。
・伊邪那美、伊弉諾が黄泉の国で伊邪那美の恐ろしい姿を見てしまい逃げ帰る
・天百襲姫が禁断の箱を見たら白蛇が夫だったそして夫の大国主は山に帰ってしまった。
・豊玉姫の出産のお姿を見られて海神に帰ってしまう。
・見てはいけない三種の神器
自分の正体を知られたトヨタマヒメは、恥ずかしさで子供を置いてワタツミの宮に帰ってしまいます。 しかし、トヨタマヒメは、生まれたばかりの息子ウガヤフキアエズ鵜茅葺不合尊が気になって仕方がありません。 そこで、息子にお乳を与えようと自分の乳房を引きちぎって産屋の傍らに張り付けました。 鵜戸神社の後方に今でも「お乳岩」と呼ばれる霊岩が存在してます。
自分の乳を岩に移し、ワタツミノミヤへ戻っていく豊玉姫ヒメ
妹「玉依毘売命」タマヨリヒメを乳母として地上に仕わせた
そして後に2人が結婚し、初代神武天皇の父が誕生したと記紀にはあります。
出典:音川安親 編 ほか『万物雛形画譜』4,江藤喜兵衛,明治14.
国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/851504 (参照 2024-09-29)
お乳岩
岩窟の凹凸のある壁の一部は、突き出た胸のような形をしています。
この「お乳岩」は、先端からゆっくりと水が滴り落ちるため常に湿っており、
古くから崇拝されてきました。地元の言い伝えでは、鵜戸神社の主祭神である
鸕鶿草葺不合(ウガヤフキアエズ)の伝説とつながりがあります。
その神話では、海の神の娘である母親が波の下にある故郷へと帰ってしまい
、鸕鶿草葺不合は見捨てられます。「お乳岩」は息子への餞別で、
彼は「お乳岩」から出る「乳」で育ち、その後伝説的な日本の初代天皇
である神武天皇の父になったと伝承されてます。
参拝者はこの岩に触れ、安産、子育ての無事、母親の健康を祈願します。
ここまでが正史とされている古事記や日本書紀の前半の神話とされてます。
更新2024/9/30
次回:3章 海幸彦山幸彦につながる別神話 ウガヤフキアエズ王朝